2024年12月10日
JLR、業界初の循環型リサイクル材料を使用した新しいシートフォームを開発、製造
■JLRは業界パートナーであるDowおよびAdientと協力し、自動車業界としては初となる循環型リサイクル材料を使用したラグジュアリー車両用の新しいシートフォームを製造1
■シートに使用しているポリウレタンフォームは、耐久性を重視して設計されているため、リサイクルが困難とされていた
■JLR Circularity Labは画期的な成果を出して、ラグジュアリー車両のマテリアルのリユースとリサイクルを繰り返し、排出量の低減、廃棄物の削減、供給の安定を高めることを目指す
■ゲイドンの本社に拠点を置くJLR Circularity Labは、専門家のパートナーやサプライヤーと部門横断的なチームを結成し、回収、リユース、修理、リサイクルの可能性についての障壁を克服するために、協力して「実践を通じて学ぶ」アプローチを採用
■循環型シートフォームの生産規模テストは2025年初頭に開始予定
■JLRが「REIMAGINE」戦略のもと電動化を推進するなか、循環性は、排気ガス以外の環境への影響に対処するアプローチにおいて重要な部分を占める
2024年11月27日、英国ゲイドン発: JLRは、使用済み車両から回収したポリウレタン製シートフォームを新しいシートに再利用できるようにしました。これにより、循環型リサイクルにおいて大きな技術的進歩をしたことになります。
これは、DowのMobilityScience™マテリアルの革新と、自動車用シートの世界的リーダーであるAdientとの協力によるもので、循環型シートフォームを自動車に利用することに成功したのは初めてのことです。
ラグジュアリー車両メーカーのJLRは現在、このマテリアルをすでに製造工程に投入しており、来年初めにはプロトタイプ車両を使って大規模な使用テストの実施を目指しています。
ポリウレタンフォームは耐久性を重視して設計されているため、リサイクルが難しいことで知られています。また、最終的には埋め立て地に廃棄され、数世代にわたり土壌に残る可能性があります。循環型のサプライチェーンを構築することで、JLRは排出量の低減、廃棄物の削減、車両用低炭素シートフォームの安定供給を実現できるようになります。
リサイクルフォームは新しい「循環型シート」を構成する要素のひとつとなり、高性能を維持しながらCO2e(二酸化炭素換算)排出量を半減させ、1シートあたり44kg以上のCO2eを削減できると試算されています。これは、スマートフォン約 3,000 台を充電するのに相当します2。
JLRのチーフ・サステナビリティ・オフィサーのアンドレア・デベインは次のように述べています。
「このような方法がもつ可能性にとても期待しています。今までにない方法で物事に取り組む姿勢を示すものであり、未来の自動車をデザイン、エンジニアリングするために必要なソリューションを見つけ、あらゆる角度からアプローチを再考するよう、私たちを促してくれています。
リサイクル業界やマテリアル科学業界の専門家、サプライチェーンのパートナー、エンジニアリングやエンジニアリングのチームとの緊密な協力が鍵となります。大規模で有益な変化を実現するには、バリューチェーン全体で取り組む必要があります。ここで得られた知識とアプリケーションは、完全な循環型社会が実現可能であることを示しており、私たちの変革にとって不可欠なものになっています。」
この画期的な進歩は、ゲイドンにあるJLR Circularity Labにおける継続的な研究とテストの結果によるものです。
これまで自動車は、寿命を迎えた後、分解や材料の分別のしやすさについて、あまり考慮されずに設計されてきました。分別が難しい混合材料、固定方法、接着剤を使用しているため、廃棄物の削減とリサイクルはほぼ不可能でした。
JLR Circularity Labは、サステナビリティ、エンジニアリング、調達、デザインからなる分野横断的なチームを結集することで、こうした課題の解決を目指しています。各チームは、サプライヤーやマテリアルの専門家と密接に協力しながら、「実践を通じて学ぶ」アプローチによって車両を分解し、リサイクルの障壁を理解、克服していきます。
ラボからのデータは、車両開発の初期段階で意思決定を行うために提供されます。これらのデータは、ガラス、スチール、アルミニウム、ポリマーなどのマテリアルをサプライチェーンに戻し、高品質基準を維持しながら新車に技術的に再利用できるか検証するテストに直接反映されるのです。
例えば、フロントバンパーに関する初期テストでは、ポリマーの使用量を減らしても同じ品質と性能を確保できることが証明され、これは単一のモデルライン3で177,500kgのCO2e削減と、560,000ポンドのコスト削減につながります。このアプローチによって、JLRは来年から新車に低炭素バンパーを物理的に提供できるようになるのです。
JLRはすでに、アルミニウム製ボディパネルのプレス加工からでる産業廃棄物をサプライヤーに戻し、新しいボディパネルに組み込むという画期的なプロジェクトにより、循環型のイノベーションに成功しています。このプロジェクトには、循環型プロセスに最適な新しいアルミニウムグレードの開発などの技術革新が含まれており、これはまさにサプライチェーン間のコラボレーションによってのみ実現可能なことです。
JLR Circularity Labは、JLRのビジネスが環境、社会、コミュニティへの影響において新たなベンチマークとなることを目的とした「REIMAGINE」戦略の実現に寄与します。その中心となるのが、より資源効率の高い経済を目指す、循環型経済に対する意欲的なビジョンです。
JLRは、 2023年からエレン・マッカーサー財団のネットワークパートナーになっており、循環型経済の原則をビジネスのあらゆる側面に適用しています。そのなかには産業変革の取り組みが含まれ、オール電動化の未来に向けて、能力要件、エネルギー効率、CO2eの影響のバランスをとるために、何千もの機器を改修して再配置してきました。
※本プレスリリースはジャガー・ランドローバーが 2024 年 11月 27日(現地時間)に発表したプレスリリースの翻訳です。
以上
1 関係者全員の認識として、このような条件下でシート用途のPU成形フォームが製造されたのは初。最初のラボテストでは、20%の循環型・再生ポリオール含有率に基づく技術的な実現可能性が証明され、次の段階のテストでは、可能な限り高い含有率にすることを目指している。
2 USEPA Greenhouse Gas Equivalencies Calculatorによる計算
3 25万台のモデルライン生産数に基づく
エディターズ・ノート
JLRとDowのMOU(基本合意書)
Dowは、ポリオレフィン、ポリウレタン、シリコーン、アクリルなどの原材料や配合製品を製造する多国籍素材科学企業です。
Dowは2021年からJAGUAR TCS RACINGのオフィシャル・サイエンス・マテリアル・パートナーです。2023年10月にDowとJLRは、その関係をJLRの広範な事業にまで拡大し、サステナビリティ主導の応用材料科学事業とイノベーションのリーダーとなるべく、さまざまな取り組みで協力する機会を相互に模索するMOU(基本合意書)に署名しました。
JLRについて
JLRの「REIMAGINE」戦略は、デザインによるモダンラグジュアリーというサステナビリティに富んだビジョンを実現することを目標としています。
2039年までにサプライチェーン、製品、オペレーションのすべてを通じてカーボンネットゼロ(排出ガス量実質ゼロ)という目標に向け、JLRは事業の変革に取り組んでいます。承認された科学的根拠に基づく目標を通じて、2030年までに事業とバリューチェーン全体で排出量を削減するためのロードマップを策定しました。この戦略の中核をなすのは、電動化です。10年以内に、RANGE ROVER、DISCOVERY、DEFENDERの3つのファミリーにそれぞれフルバッテリー電気自動車(BEV)を取り揃え、JAGUARは、全ての車種がBEVとなります。
JLRは英国を拠点とする企業であり、英国に2つの主要なデザインおよびエンジニアリング拠点、2つの車両生産工場、エンジン・マニュファクチャリング・センター、バッテリー・アッセンブリー・センターを有しています。さらに中国(合弁会社)、スロバキア、オーストリア(マグナ・シュタイヤーとの契約製造)、インド(タタ・モーターズ・リミテッドとの契約製造)、ブラジルにも車両生産工場を展開、7つのテクノロジー拠点を有します。
JLRはタタ・サンズ傘下のタタ・モーターズ・リミテッドの100%子会社です。
◆お問い合わせ先◆
ジャガーコール(フリーダイヤル)0120-050-689(9:00-18:00、土日祝日を除く)
ランドローバーコール(フリーダイヤル)0120-18-5568(9:00-18:00、土日祝日を除く)